2013年度 卒業・修了研究


大学院 教育学研究科

松茂良 恵美

染織工芸品の空間演出による新たな価値の発見と可能性について

私の修了研究の最終提示形態(修了論文)は、「21世紀を生きる染織作家たち──布を通して見えてくる染織作家それぞれの世界──」と題して企画・構成・演出した展示空間である。

この企画展では、戦後に技術復興された工芸従事者から数えて三~四代目の世代とされる2000年以降に作家活動をし始めた作家に着目して、金城宏次/宮城奈々/外間修/島袋領子の作品を展示した。

空間演出という点ではガラスケースに入れて見て貰う布と、ケースに入れない展示の二つに分け、展示スペースもその二つ――明るい照明の「ショーケース側」と、後述する薄暗い中での「プロジェクション側」――に分けた。

後者では、金城宏次が染める地元コザ市の風景を、型紙に張る材料である紗(しゃ)をスクリーンにして投影し、また、宮城奈々がインドネシアの工房で作った綿と布に、現地の風景を投影した。



金城宏次 『Welcome To KOZA』

紅型額装、型紙80×60(㎝)プロジェクションのサイズは可変

宮城奈々の綿と布
カポック 120×180(㎝) プロジェクションのサイズは可変


島袋領子『木綿紺地経緯絣経浮花織』

木綿、帯 120×40(㎝)


アシャリフ・エリカ

「イランの女性が抱える問題の視覚表現」

幼少期からイランと日本で過ごした私は、社会、文化、宗教、政治、そして歴史に縛られていました。


私は制作を通して自らの“存在”について考えました。


作品を制作するということは、異なる文化を持つイランと日本の二つの文化の間に生き、翻弄されながらもしなやかさと強さを持ち、人生において生じる葛藤や不安などに対峙し、自らと対話をしながら、問題を提起することです。
宗教や文化などの型に嵌められずに、しかし自らのルーツについては常に心に刻み続けたいと思っています。

Adam Hawwah

映像、音声

Leily ~water lily~ "Reflection"
スティール写真 サイズ可変

Silent Islam
映像、音声


教育学部

美術教育専修

比嘉 菜都美

「永遠が一瞬に至るまで」

絵画を鑑賞するのが好きだ。特に、何気ない一瞬を切り取ったような作品を見るとわくわくする。絵に描かれなかった前後の時間まで感じ取れるからである。
何気ない、けれど誰かにとっては何か意味があったはずの一瞬。絵画は一瞬を永遠という容れ物に閉じ込める行為だとしたら……。
そう考え、私は一瞬が永遠に至るまでの経緯を想像してみることにした。

<髪を編む少女>

′紙、インク 210×148(㎝)

<乾草車> ′

′紙、インク 210×148(㎝)

<夜のカフェテラス> ′

′紙、インク 210×148(㎝)



上原あかり

変容に対する違和感

何を求められているか、どんな顔をするべきか、
察する子が生き残る。

その場の空気を壊してしまう人は、何となく、輪の外へ遠ざけられていく。無理をしてでも雰囲気を明るくしてくれる人は、輪の中へ中へといざなわれる。だから私は、「その場」が無くなるとたちまち消えてしまう、虚像の私を作り出す。本来の私よりも、虚像の私の方が受け入れられやすいものだから、本来の私の必要性をだんだん感じなくなっていった。

うかがう、のぞく、おそるおそる(部分)
布、スチレンボード、低発泡塩ビ板、鏡 30.5×46.5×6.5(㎝)

あんなちゃん、空気を航進す。
紙、ペン、色鉛筆

あんなちゃん、空気を航進す。(作戦司令室)
118.9×84.1、59.4×84.1(㎝)


秋山 美野

「バランス・アンバランス」

私たちの身の周りにあるどんな事物でも、重力の影響を受け、バランスを保ちながらそこにあるが、人間はこのバランスを崩し、そしてまた整えることを繰り返しながら動く。例えば、人はただ歩くだけでも、一歩一歩片方の足に重心を移動させ、崩れたバランスを取り戻すためにもう片方の足を踏み出す。このようにバランスが崩れることによって動きが生まれると言えるであろう。「Life of motion」、動くことは、人間にとって生活であり、生命であり、自己表現である。スポーツや踊りのような身体の表現においては、あえて不安定な体制を保とうとしながら、バランスとアンバランスの間で美を表現することが多い。この人体の形と動きに私は魅力を感じ、人体の「バランス・アンバランス」の間に生じる動きを一年間のテーマとして選んだ。

「thinking time」立体3

針金、紙、粘土、ボンド 62.5×22×58cm


榎 砂千可

「粘触」

得体の知れない粘触へのこだわり。
粘触は固体が液体に溶けて姿を変えた、弾力性に富んだ物質であり、一度また固体に変化しても手を加えることで復元しうるものだ。
粘触に対する不快感や気持ちの悪さを、「雲を作る(触る)」、「雲を見上げる」ことで捉え直してもらえたら嬉しい。

「雲のテラス」
木材、ガラス板、飛散防止膜、ビニール袋、シリコン、塗料、

トイレットペーパー、水 93×250×300(㎝)

「雲のテラス」(部分)


宮城 遥

「密集」

私は密集しているものが好きで、それらを描いている時間がとてもしっくりくる。
自分にとって心地の良い密集、自分の琴線にふれる密集というあやふやな存在を探し、自分自身の価値観やこだわりと向き合って一つ一つ確認しながら一年を通して制作してきた。

「Horn Ⅰ」(部分)
和紙、油絵具 130×100(cm)

「Balanomorpha」(部分)
和紙、油絵具 50×50(cm)

「密集 白」(部分)
和紙、水彩絵具 90×66(cm)