糸数 弘樹さん
琉球大学 教育学部 美術工芸科 1986年 卒業
Art Center College of Design 1992年 卒業
Warner Brothers 1993年 入社
Walt Disney Animation Studio 2000年 入社
Ⓒ Walt Disney Animation Studio
Q1:現在のお仕事の様子をお聞かせください。
Walt Disney Animation Studio でディズニーのCG映画を制作しています。
Q2:なぜ琉大の美術教育専修に入ろうと思ったのか、また受験にあたってどんな勉強をされたか、お聞かせください。
美術の先生になりたかったですね。理由は、なんだか楽そうな仕事にに見えたので(笑)。 でも教育実習で中学の先生って大変だなあと実感しました。琉大は一浪で入りました。浪人中は那覇の絵画教室に通い、石膏デッサンを学びました。
Q3:琉大での学生生活はいかがでしたか?研究活動や友人関係、教員との関係等、印象に残っていることがあれば教えて下さい。
人生を振り返っても琉大美術工芸科の4年間はとても貴重な時期でした。高校まで殻に閉じこもっていた自分が急に爆発した感じです。先輩や教官たちがかなり個性的な人間ばかりで、それにかなり影響を受けました。アーティストとして個性や自己表現というものがいかに大切かというのを思い知らされました。今の自分の性格もこの時代に作られたという感じです。
Q4:卒業研究についてお聞かせ下さい。卒業研究はご自身にとって、どのような経験だったのでしょうか。またその経験は、卒業後の進路にどのような影響をもたらしたのでしょうか。
卒業研究は "新しい水上遊具の研究" というテーマで ずいぶん好き勝手なことをやってました。もともと海が好きで、将来は何かすごい発明でもしたいという夢がありました。
卒業制作では、サーフボードに乗って、背中に小型エンジンを担ぎ、その動力でサーフボードに取り付けたスクリューが回り、水面をすいすい走るという遊具をデザインしました。実際にプロトタイプを作って琉大の池で実験してみました。ところが、サーフボードにしがみついたまま池の中にブクブク沈んでいき、みんなの笑い者になってしまいました。それ以外にも奇抜なアイディアでみんなからよく笑われていたのを覚えています。(笑)
卒業研究は思ったようにうまくいかなかったけど、自分が思いついたことは他人の目を気にせず行動にうつすということは大切だと思います。
Q5:卒業後のことについて少し詳しくお聞きします。
・琉大卒業後,なぜ渡米されたのですか?
琉大在学中は遊びすぎたので、その反動で本格的に一からデザインを勉強したくなりました。先生に相談したところ、カリフォルニアに有名な工業デザインの大学があると知り、それで留学を決意しました。
・アメリカでの大学生活についてお聞かせ下さい。
"アメリカは行けば何とかなる" と思ってました。ところが誰かが助けてくれるわけでもなく、結局自分が頑張らなければ何も起こらないと言う事に気が付きました。特に英語は苦労しました。もともと暗記力が弱いので、TOEFLという大学入学の語学試験も3年かかってやっとパスし、念願のアートセンターという工業デザインの大学に入学できました。
アートセンターのレベルの高さにはびっくりしました。とにかく課題の量が多すぎて、睡眠と食事時間意外は課題に追われる毎日でした。他のアメリカの大学だと 週末はパティーにあけくれるのが普通ですが、この学校では生徒のほとんどが寝る間も惜しんで、朝から晩まで課題に没頭してました。この学校では Craftsmanship (職人技)がいかに大切かを思い知らされました。
・大学卒業後,映画のお仕事についた経緯を教えて下さい。
実は、アニメに興味があって今の業界に入った訳ではありません。大学在学中にCGを少し学んだのがきっかけです。CGも最初から興味があったわけでもなく、必修科目で採らされたという感じです。当時はちょうどCGが映画に使われ始めたころでCGアーティ ストがまだ少なく、わりと簡単に就職できました。映画の会社 ワーナーに見習で入り、そこで一生懸命頑張って本採用となりました。それからディズニーから引き抜きがあり、現在に至っています。
・モデラーというお仕事は,どんな仕事なのでしょうか。
モデラーという職業はキャラクターデザイナーの描いたスケッチをコンピューター上で3Dにおこす仕事です。CGといっても難しい数値入力やプログラミングではなく、粘土細工のようなことをコンピューターを使って作業しているという感じです。最近は塔の上のラプンツェルやシュガーラッシューのキャラクターをいくつかを制作しました。
Q6:沖縄で美術や美術教育を学ぶ後輩達へのメッセージをひとこと、お願いします。
最近は個性がない学生が多いように感じます。個性がなければ創造も生まれてきません。他人と同じで安心してはいけません。自分らしさを見つけましょう。それから、与えられた課題は真剣に取り組みましょう。特にデザイナーを志す人はCraftsmanship (職人技)も大切な要素です。
<おわり>